ポンド(pound)の略称が「lb」なのは、ラテン語の「libra(天秤・秤の単位)」に由来します。古代ローマでは「libra pondo(リブラ・ポンド)」という表現が使われており、「libra」が重さの単位、「pondo」が「重量」や「ポンド」の意味を持っていました。そのため、略記するときに「libra」の「lb」が使われるようになったのです。
このように、現代英語で使われる略記の多くはラテン語由来であり、その背景を知ることで英語表記の歴史的な成り立ちを理解することができます。以下に、その他の代表的な略記とその由来について詳しく説明します。
他の例
- No.(Number)
- 「No.」は「Number(番号)」の略として使われますが、英語の「Number」から直接「No.」になったわけではなく、ラテン語の「numero(数)」に由来します。
- 実際には「№」という記号が正式な表記として存在しますが、英語圏では「No.」が一般的に用いられています。特に住所表記やリスト、整理番号などで頻繁に見られます。
- Rx(処方箋)
- 医療の処方箋を表す「Rx」は、ラテン語「recipe(取れ、受け取れ)」の略です。
- 古代ローマや中世ヨーロッパにおいて、薬剤師が処方する薬の指示書の冒頭に「recipe」と記し、「この処方を受け取りなさい」という意味を持たせていました。
- 現代でも医療現場では「Rx」という記号が処方箋を示すシンボルとして使われています。
- i.e.(すなわち)
- 「i.e.」はラテン語「id est(すなわち、それは)」の略で、具体的な説明や言い換えを加える際に使われます。
- 例えば、「I like citrus fruits, i.e., oranges and lemons.(私は柑橘類が好きです。すなわち、オレンジとレモンです)」のように使用されます。
- e.g.(例えば)
- 「e.g.」はラテン語「exempli gratia(例として)」の略で、「例えば」や「例を挙げると」といった意味で使われます。
- 「Many animals hibernate, e.g., bears, hedgehogs, and bats.(多くの動物が冬眠します。例えば、クマ、ハリネズミ、コウモリなどです)」のような形で用いられます。
- etc.(など)
- 「etc.」はラテン語「et cetera(その他)」の略で、「…など」や「その他同様のものが続く」ことを示します。
- リストや並列の例を挙げた後、「and so on」の代わりに「etc.」を使用します。
- 例:「We need paper, pens, notebooks, etc.(紙、ペン、ノートなどが必要です)」
- vs.(対)
- 「vs.」はラテン語「versus(~に対して)」の略で、試合や法廷などで相手を示す際に使用されます。
- スポーツでは「Japan vs. Brazil(日本対ブラジル)」のように使われ、法律では「Brown vs. Board of Education(ブラウン対教育委員会)」のように裁判の案件名にも用いられます。
- cf.(参照せよ)
- 「cf.」はラテン語「confer(比較せよ、参照せよ)」の略です。
- 学術論文や研究論文などで、他の資料や関連する文献を参照する際に使用されます。
- 例:「For more details, cf. Smith (2020).(詳細については、スミス(2020年)を参照せよ)」
英語の略記にラテン語が多い理由
英語はゲルマン語派に属しますが、中世にフランス語(ノルマン・フランス語)やラテン語の影響を強く受けました。特に、学問・法律・医療・宗教などの分野では、ラテン語が長く公用語として使用されていたため、その名残が現代の略記にも反映されています。
例えば、学術論文や公式文書では、今でもラテン語由来の略記が一般的に使われています。「et cetera(etc.)」や「exempli gratia(e.g.)」などは、文書を簡潔にまとめるために便利な表現であり、英語圏の人々にとっても馴染み深いものとなっています。
このように、現代英語における略記は、ラテン語の影響を色濃く受けながら発展してきたものが多く、歴史を知ることでより深い理解が得られます。
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