乗用車の「クーペ(Coupé)」の由来と歴史について解説

1. クーペの語源

「クーペ(Coupé)」という言葉は、フランス語の「couper(切る)」に由来します。もともとは18世紀の馬車のデザインを指し、4人乗りの馬車の前半部分を「切り落とし」、2人乗りにしたものを「クーペ」と呼んでいました。このデザインが後の自動車のクーペにも影響を与えました。
(フランスパン/バゲットの表面に刻まれた切れ目もクーペ/クープと呼びます。こちらを参照ください)

2. 自動車におけるクーペの登場

自動車の初期(19世紀末~20世紀初頭)には、クーペは2ドアで、屋根が固定された小型の乗用車として定義されました。エレガントでスポーティなデザインが特徴で、馬車時代の名残から「運転席と客室が分かれた構造」が採用されることもありました。

3. クーペの発展と黄金期(1920~1970年代)

1920年代以降、自動車技術が発展し、クーペは単なる「2ドア車」ではなく、スタイリッシュでスポーティなモデルとして認識されるようになりました。

  • 1920~30年代: ロールス・ロイスやブガッティなどの高級メーカーがクーペを生産し、富裕層向けのエレガントな車として人気に。
  • 1940~50年代: クーペは一般市場にも広がり、アメリカでは「ファストバック」や「ハードトップクーペ」が登場。
  • 1960~70年代: マッスルカー(フォード・マスタング、シボレー・カマロなど)やスポーツクーペ(ポルシェ911、ジャガーEタイプなど)が大ヒットし、「クーペ=スポーティな車」というイメージが確立。

4. 1980年代以降の進化

クーペ市場は1980~90年代に多様化し、以下のようなジャンルが登場しました。

  • GT(グランドツアラー)クーペ: メルセデス・ベンツSL、BMW 8シリーズなど、長距離走行向けのラグジュアリーなクーペ。
  • スポーツクーペ: トヨタ・スープラ、日産フェアレディZ、ホンダNSXなど、日本車のスポーツクーペも世界的に人気に。
  • FF(前輪駆動)クーペ: ホンダ・プレリュードやトヨタ・セリカのような、実用性とスポーティさを両立したクーペ。

5. 21世紀のクーペと現状

2000年代以降、クーペ市場はSUVやクロスオーバーの台頭によって縮小しつつあります。しかし、スポーツクーペやラグジュアリークーペは依然として人気があり、特に以下のような車種が注目されています。

  • ハイパフォーマンスクーペ: ポルシェ911、BMW M4、アウディRS5など。
  • EV(電動)クーペ: テスラ・モデルS(2ドアではないがクーペ的スタイル)、ポルシェ・タイカンなど。
  • 4ドアクーペ: メルセデス・ベンツCLSやアウディA7のような「クーペ風デザインの4ドア車」も増加。

6. クーペの今後

近年、クーペは従来の「2ドアスポーツカー」だけでなく、電動化や4ドア化といった新しい形に進化しています。一方で、伝統的な2ドアクーペの存続は厳しくなりつつありますが、「デザインの美しさ」と「スポーティな走り」というクーペの魅力は、今後も一定の支持を集めるでしょう。

まとめ

クーペは馬車時代のエレガントなデザインから始まり、自動車においてはスポーティなイメージを確立しながら進化してきました。現在では電動化や4ドアクーペの流行など、新たな時代を迎えていますが、「クーペらしい美しさと走行性能」は今後も受け継がれていくでしょう。

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